以下は 小笠原林樹前会長と小山田幸永元広報委員の共同執筆による日本英語教育学会(JELES)の紹介ならびにこれまでの活動記録の一部である。http://www.geocities.jp/jelesreal/より再録するにあたって、できる限り元の表現をそのまま残すように心がけたが、形式の統一などのため書式・字句の追加・修正を行った部分もある。また、終了した研究集会の会場案内などについて、誤解を避けるために削除した部分がある。
JELESとは略称で、本学会の正式名称であるThe English Language Education Society of Japanから作ったものである。
本学会は、わが国の英語教育界が、とかく教授法の形式上の伝統に頼りすぎたり、海外などで当面流行している語学教育上の風潮や方法を無批判的に取り入れがちである現実に対し、より科学的な方法により日本人学習者、日本人英語教師のあり方を解明し、提案する、開かれた調査・研究組織として発足するものである(なお、「より科学的な方法」とはどういうことかについては、ここでは深入りしないでおく)。
上述の内容を言い換えると、英語教育を科学的、学問的に考究し、調査・研究していくということは、1956(昭和31年)頃から認識され始めたものである、本学会の創設発起人であった小笠原林樹(当時、東京大学付属高校教官)が提唱し始めた、いわゆる「英語教育学」の構築と、それを教育現場に適用する、と言うことなのであった。
そもそも人間が言語(母語)を習得していく行為はきわめて複雑であり、ましてやその人間が後年主として学校などで第2言語(いわゆる外国語)を習得していくことも複雑な行為であることを思えば、英語学習、英語教育を解明していく諸研究は当然複雑科学の一つであると言えよう。
ここでいう複雑科学ということは、心理学、論理学、社会学、言語学、文化人類学などの関連諸学から必要な知識や刺激を受けていく、ということであり、いわゆる学際的(interdisciplinary)にならざるを得ない、ということである。
[付]小笠原が「英語教育学」という発想と概念を持つに至ったのは、もとはと言えば彼が学生時代、旧東京文理科大学東京高等師範学校付属図書館で見つけ、魅せられて丹念に読んでいった、H.E.PalmerのThe Scientific Study & Teaching of Languages(330pp, 1917, London)から得たものである(このタイトルの“scientific”ということに注目されたし)。
日本英語教育学会(JELES)の紹介1
2008年(平成20年)8月10日現在
http://www.geocities.jp/jelesreal/intro1 より再録
本学会は英語教育関連の学会第1号として発足させたものであり、その創立は1970年(昭和45年)であった。そのための総会は、同年11月27日に早稲田大学本部構内小野講堂で開かれた(プログラムはこちら)。参会者は約250名、北海道から九州までの多くの都道府県にわたっている。
本学会の創立前史については、創立準備委員の一人であった小笠原林樹が書いた文章があるので、近くホームページに載せる予定である。
日本英語教育学会(JELES)の紹介2
http://www.geocities.jp/jelesreal/intro2 より再録
本学会の歴代会長は、以下の通り。(敬称略)
初代会長 宮田斎(早稲田大学教授)
第3代会長 波多野完治(お茶の水女子大学長)
第3代会長 安藤昭一(京都大学教授)
第4代会長 羽鳥博愛(東京学芸大学教授)
第5代会長、小笠原林樹(元文部省主任調査官)
日本英語教育学会(JELES)の紹介2
http://www.geocities.jp/jelesreal/intro2 より再録・追加・字句修正
本学会は、当初は東京都内でのみ開催していたが、地方の会員も増えてきたので、創立8年後あたりから支部制をとっていた。
関東支部(早稲田大学内)
関西支部(京都大学教養部内)
北海道支部(北大教養部内)
中京支部(愛知県立大外国語学部内)
東北支部(東北学院大学文学部内)
しかしながら、中部、四国、九州などの各地区に別に独自の英語教育学会が開設されたのにあわせて、JELESの支部をそれぞれJELESの姉妹学会として改称させたのであった。その結果、次の英語教育学会に発展していったのである。
関西英語教育学会(京都教育大内)
東北英語教育学会(宮城教育大内)
北海道英語教育学会(北海道教育大内)
本学会の各支部は、先述のように独立させたのに当たって、日本英語教育学会関東支部は、関東英語教育学会とか東京英語教育学会と改称するよりは、日本の英語教育史的に意味のある「日本英語教育学会」という名称を継承することにしたのである。
日本英語教育学会(JELES)の紹介2
http://www.geocities.jp/jelesreal/intro2 より再録
日本英語教育学会(JELES)の学会活動としては、次のような諸行事を行なってきている。
年次研究大会(総会)
現在までに38回開催し、2009年3月下旬には、第39回研究大会を開催する(研究発表希望者は、いつでも事務局に申し込むことが出来る)。
夏期研究大会
会員あるいは非会員の中には、3月下旬の年次研究大会の他に、学校がまだ夏休み中の7月下旬か8月中のどこかで発表できる会合を設定して欲しい、という声がでてきたので、2006年度の夏から夏期研究大会を始めることにしたのである。
不定期研究会(講演会)
年次大会の時期、夏期研究(大)会の時期以外の時に、来日したあるいは滞在中の海外からの言語教育学者、言語学者、言語文化論学者を招いて講演会なり研究会を臨時に開催している(講演を行なった著名な学者名を挙げておく。敬称略。肩書きは当時のもの)。
海外から
久野暲(ハーバード大)
白井恭弘(コーネル大)
R. Ellis(ロンドン大)
J. B. Heaton(BBC)
J. Sinclair(バーミンガム大)
R. Burchfield(OUP)
C. Gattegno(The Silent Way創設者)
A. J. J. Dunn(British Council)
E. Leizi(チューリヒ大)
T. Stablehood(オックスフォード大)
ドメニコ・ラガーナ(イタリア人。アルゼンチン在住日本語研究家)
国内から
今井邦彦(都立大)
柴田義松(東大)
鈴木孝夫(慶応大)
金谷憲(東京学芸大)
吉田研作(上智大)
上田明子(津田塾大)
森常治(早稲田大)
稲村博(筑波大)
林四郎(国立国語研)
平泉渉(外務省)
阿部一(獨協大)
中津燎子(発音研究者、大宅賞受賞者)
日本英語教育学会(JELES)の学会活動
http://www.geocities.jp/jelesreal/activities より再録・書式修正
日本英語教育学会の会員について
入会して本学会で研究発表したいとか、勉強したり刺激を受けたいと思う者は、職業や地位に関係なく誰でも入会できる。現在の会員は、学生、英語教員(小中高大など)、教育委員会指導主事、英語学校や英語塾の講師、会社員、出版社員と多様多彩である。
入会手続きは簡単で、事務局に電話かFAXで申し込めば、学会の諸行事案内を受け取ることになる。
年会費は、以前は徴収していたが、近年は会合の際に当日参加費として、500円~1,000円程度徴収することにしている。
日本英語教育学会の併設研究会
日本児童英語教育学会(SELEC)、日本現代英語教育学会(JASCEL)、企業内語学教育研究会(CITIC)など
日本英語教育学会の刊行物
本学会の『研究紀要』は、関西支部が創刊号から第12号まで刊行した。本学会の準紀要として『英語教育展望』が1978年(昭和53年)~1982年(昭和57年)にわたって13回刊行された(刊行のスポンサーは、日本国際コミュニケーション学会であった)。残部は今はない。リプリントに値する好論文がいくつかあることを付記しておきたい。
本学会の企業内語学教育研究会が、そこでの講演を文字化したものを単行本化して刊行したことがある。
『国際交流と言語文化』(1982、語研刊)
日本英語教育学会の総力編集になる専門書としては、下記の記念碑的刊行物がある。
日本英語教育学会特設プロジェクト 安藤昭一・小笠原林樹 編
『英語教育現代キーワード辞典』(670pp, 1991、増進堂刊)
日本英語教育学会の本格的な『研究紀要』を編集刊行する可能性については、現在本学会企画委員会で構想中である。以前であったら、どこかの出版社に無理を言って刊行してもらうところであるが、現在のようにコンピューター上で推敲したり編集したり、プリント・アウトできるわけであるから、コンピューターに強い会員が協力すれば、リーズナブルな実費で刊行可能と判断されるからである。
『研究紀要』の刊行の実現まで、いま少しの時間の猶予をいただければと願っている。
日本英語教育学会(JELES)の会員について、等
http://www.geocities.jp/jelesreal/others より再録・書式修正・現行規則との不整合を明示
日本英語教育学会(JELES)第40回研究大会
<日時>平成22年3月29日(月)、30日(火) 両日とも10:00~
<会場>早稲田大学本部構内11号館4階第4会議室(東京都新宿区西早稲田1-6-1 地図)
<参加費>30日/1,000円 31日/2,000円 【ママ】
Day1(29日)
10:00 ~ (参加者による懇親的フォーラム)「よい英語教師とは」
11:00 ~ 西岡裕美(都・杉並高)「Teacher beliefsとは-よりよい英語授業のために」
12:00 ~ 昼休み
13:00 ~ 長尾美武(岐阜・聖徳学園中高)「意味表出としての音読」
14:00 ~ 生田祐二(千葉大 院生)「千葉大大学院英語教育学コース紹介」
15:00 ~ 森永弘司(同志社大)「アンケート調査が語る大学生の望む英語教育
16:00 ~ [講演] 原田康也(早大教授)「英語教育への科学的アプローチの可能性と実践例」
Day2(30日)
10:00~ [集中講義]「英語教師はReal Englishの観察者、研究者でもありたい」小笠原林樹(元・文部省・東大)
(敬称略)
日本英語教育学会(JELES)第40回研究大会
http://www.geocities.jp/jelesreal/100329JELES.htm より再録・書式修正
月例研究会(REAL英語研究会)(1/23)
※英語に関心のある方なら、どなたでも参加できます。
日時:2010年1月23日(土)12:30 ~15:00
場所:明海大学浦安キャンパス2631号室(JR新浦安駅南口から徒歩15分)
内容:小笠原林樹先生による英作文と英語の語法の知識
参加費:1,000円(講師交通費等)
※初回に限り、テキスト代1,000円(以降は参加費のみ)
元文部省教科書調査官、小笠原林樹先生に、毎月英語の勉強会を開催して頂いています。英語学習に熱心な高校教諭、佐藤知代先生の情熱により立ち上がった勉強会です。現在、参加者の多くは学校の英語の先生方ですが、一般の人にもわかりやすい内容で、細かい語法から日英米比較文化論に至るまで、指導して頂いています。英語に興味関心のある方なら、どなたでも参加出来ます。
例1:今晩のパーティーはとても楽しかったです。→ I had a very good time at the party tonight.
※enjoyは大げさで、しばしばお世辞に用いる。
例2:お昼はおごりますよ。→ Let me buy you lunch.
例3:それは次の次の駅です。→ It is the stop [station] after the next.
(敬称略)
月例研究会(REAL英語研究会)(1/23)
http://www.geocities.jp/jelesreal/100123real.html より再録・書式修正・一部削除
日本英語教育学会(JELES)第39回研究大会
<日時>平成21年3月30日(月)、31日(火) 両日とも10:00~17:00
<会場>早稲田大学本部構内9号館5階大会議室(東京都新宿区西早稲田1-6-1 地図)
<参加費>30日/1,000円 31日/1,500円
Day1(30日)
10:00 ~ (学会研究員による紹介.)「ヴィゴツキーの言語教育論」
11:00 ~ 雨宮真一(学芸大国際中等学校)「帰国子女の英語力」
12:00 ~ 昼休み
13:00 ~ 藤田真理子(慶応義塾SFC高等部)「Interactive Voice Communityの導入」(実践報告)
14:00 ~ 渡辺恭子(早大政経)「教養英語におけるFiction教材の編集と指導法」
15:00 ~ 森永弘司(同志社大)「外国語学習意欲を高めるストラティジーを求めて」
16:00 ~ [講演] 石橋圭子(横浜国大)「Multiple Intelligenceと英語教育」
Day2(31日)
10:00~ [英語教育研修講座]「英語教師と英語知識、英語力」小笠原林樹(元早大/慶応大)
(敬称略)
日本英語教育学会(JELES)第39回研究大会
http://www.geocities.jp/jelesreal/090330JELES.htm より再録・書式修正
日本英語教育学会(JELES)2008年度夏期研究会
<日時>平成20年8月28日(木)、29日(金)10:00~
<会場>早稲田大学本部構内9号館5階大会議室(東京都新宿区西早稲田1-6-1 地図)
<参加費>両日共 各 1,000 円
Day1(28日)
10:00 小笠原林樹(早大EXT.)「旧制都立中学校で受けた英語授業」
11:00 生田裕二(千葉県立東金高)「あえて受験英語のメリットを考える」
12:00 昼休み
13:00 小山田幸永(明海大別科)「中国人留学生の英語に見られる誤答分析」
14:00 清水友子(慈恵会医大)「大学生のライティング指導に必要なフィードバック・ケア」
15:00 木村修平(京都女子大)「Wikiを用いた英文法解説サイトの構築」
16:00 [講演]森永弘司(同志社大)「語彙力測定テスト結果にもとづく大学生の語彙力強化指導」
Day2(29日)
10:00~16:00 [研修講座]「英語教師と英語知識と英語運用力」小笠原林樹(元文部省)
(敬称略)
日本英語教育学会(JELES)2008年度夏期研究会
http://www.geocities.jp/jelesreal/080828JELES.htm より再録・書式修正
<参考記録>日本英語教育学会 第1回総会、研究大会プログラム
※敬称略。肩書きは当時のもの
1970年(昭和45年)11月27~28日
於 早稲田大学7号館 小野講堂
Day 1 - 11月27日(金)
9:30 受付開始
10:00 開会挨拶 早大 宮田 斎
学会の現勢と将来計画 文部省 小笠原 林樹
総会
会則の検討
会計報告
役員選出
会員意見交換
12:00 昼休み
13:30 研究発表
「中学校段階における英文読解指導について」(大阪教大付中 樋口忠彦)
「外国語教育のための仮説と枠組」(山形市教委 J. A. Johnson)
「英語教育の原点にたって」(沼津、加藤学園幼稚園 飯塚成彦)
「直読直解教育の一方法」(言語教育研究家 江田愿)
Day 2 - 11月29日(土)
9:30 受付開始
10:00 シンポジアム「英語教育研究における実験の可能性の検討」
スピーカー:
東京学芸大 羽鳥博愛
茨城キリスト教大 土屋澄男
国立教育研究所 藤田恵爾
東大大学院 西谷さやか
12:30 昼休み
13:30 記念講演「認知学習の心理学から見た外国語教育」 お茶の水女子大学長、文博 波多野 完治
16:00 閉会挨拶 早大 牧野 力
回顧的コメント…現時点(2008年(平成20年)8月)から約40年前のこの第1回研究大会プログラムを見てみても、本学会の研究発表や討議、シンポジアム、講演のテーマの選択や内容が、いわゆる英語教育屋さん(英語教授法屋さん)の集まりやお祭りとは違っていることが分かる。本学会が「学会」である以上、初心忘るべからずで、今後ともこの路線を堅持していきたいと願っている(本学会一委員)。
日本英語教育学会 第1回総会、研究大会プログラム
http://www.geocities.jp/jelesreal/1970 より再録・書式修正